腰のゆがみや関節の動きを良くする運動
腰の歪みを矯正する腰痛体操
腰を使いすぎると、腰の組織が老化・変形して椎間板ヘルニアなどの障害を発症します。腰の障害に伴う慢性的な腰痛には、腰を痛みの少ない方向にゆっくりと伸ばす柔軟体操・ストレッチングが有効です。
腰のゆがみを矯正したり、関節の動きを良くする効果があり、一般に腰痛体操とも呼ばれます。自宅でも手軽にできる体操法について、具体的なやり方をイラスト付きで紹介します。
※柔軟体操によって得られる健康効果については、別項「運動療法の効果」で詳しく解説しています
<目 次>
1.体操を行う際のポイント、注意点
- 体を締めつけない動きやすい服装で行いましょう
- 体が沈み込むような柔らかい布団やマットの上では行わず、平らなところで行いましょう
- ゆっくりとした動作で行いましょう。必要以上に力んだり反動をつけてはいけません。
- 強い痛みや不快感を感じない範囲で伸ばしましょう
→筋肉が伸びる気持ちよさを感じながら行います。やや痛みも感じる「痛気持ちいい」くらいが最も効果的とされます。毎日続けることで少しずつ曲げ伸ばしできる範囲が大きくなりますので、焦らずに続けましょう - 呼吸は止めずに行いましょう。息を吐きながら伸ばし、吸いながら元の姿勢に戻るのが基本です
- 体が温まっている時は筋肉が柔らかく関節の動きが良くなります。温熱効果で痛みも和らぎますので、入浴後などに行うのがオススメです
- ぎっくり腰のように、急で激しい腰痛が見られる場合は行ってはいけません
- 体調がすぐれない時や、痛みが強い時は無理に行わずに休みましょう。運動中や運動後に不快な症状が現れた時も同様です。すぐに運動を中止し、症状が治まるまで安静にしましょう。良くならない時は速やかに医療機関を受診してください
- 腰痛の治療で通院中の人、腰以外にも持病のある人は、必ず事前に医者の指示を仰いで下さい
運動全般の注意点については「運動を行う際のポイント・注意点」を参照してください。
2.前かがみになると腰が痛む場合の体操
椎間板ヘルニアや腰の筋肉疲労などによる腰痛は、背中を丸めて前屈した時に、足腰の痛みやしびれが起きたり、症状が強まったりする反面、後ろに反らせると症状が和らぐ傾向があります。
こうしたタイプの腰痛に対しては、腰を後ろにそらせる体操が有効です。
やり方1 マッケンジー体操(上体反らし体操)
実際に痛みの軽減や腰の機能回復に効果があったという声が多く、世界中で取り入れられている体操です。
- うつ伏せになり両手を肩幅につきます。下半身は力を抜いて床につけたまま上体を少し起こし、両ひじを立てて体重を支えます。
- 「1」の姿勢が苦痛でなければ、ひじを伸ばして手のひらで体重を支えます。この時、痛みに耐えられる程度まで上半身を上げていくのがポイントです。
- 腕を伸ばした状態を1〜2分維持した後、元のうつ伏せに戻ります。これを10回くらい繰り返します。
痛みが強くて腕を伸ばしきれない場合は、「1」の姿勢のままで腰を反らせましょう。
1〜2時間ごとに1セット行うと効果が期待できます。ただし時間や回数はあくまで目安ですので、きついと感じる時はできる範囲で行って下さい。
やり方2 壁押し体操
股関節やアキレス腱のストレッチにもなる体操です。
- 壁に向かって両足を前後に大きく開いて立ちます。
- 前のひざを曲げ、両手で壁を押しながら、腰をゆっくりと少しずつ反らせていきます。この状態を数秒間維持します。
- これを10回くらい繰り返します。
3.背中を後ろに反らせると腰が痛む場合の体操
脊柱管狭窄症、腰椎分離症・すべり症、変形性腰椎症などによる腰痛は、上体を後ろにそらせた時に足腰の痛みやしびれが起きたり、症状が強まったりする反面、前かがみになると症状が和らぐ傾向があります。
こうしたタイプの腰痛に対しては、腰を丸める体操が有効です。色々なやり方がありますので、自分でやりやすい方法で行いましょう。
やり方1 両ひざ抱え体操
- 仰向けに寝て両ひざを抱えます。
余裕があれば首を持ち上げて"おへそ"をのぞきこむようにすると、より効果が高まるほか背筋を伸ばすストレッチにもなります。 - その状態を数秒間維持します。これを10回くらい繰り返します。
やり方2 片ひざ抱え体操
- 仰向けに寝て片ひざを両手で抱えます。
- ひざを胸に近づけて、その状態を数秒間維持します。
- これを10回くらい繰り返します。反対の足も同様に行います。
やり方3 ひれ伏し体操
- 正座をして上半身を前に倒し、肩幅に開いた両腕を前に伸ばします。この時、腰をしっかり落としてお尻が浮いてしまわないように気をつけて下さい
- その状態を数秒間維持します。これを10回くらい繰り返します。
4.その他の腰痛体操
◆腰椎(腰部の背骨)の動く範囲を広げる運動
猫伸び体操
背骨の関節の動く範囲(可動域)を広げたり、スムーズに動くようにする効果があります。あらゆるタイプの腰痛に有効ですが、やや症状の重い椎間板ヘルニアがある人は行わないほうが良いでしょう。
- 両手、両ひざをついた姿勢になります。
- 猫が伸びをするように、軽く背骨を丸めたり反らせたりします。ゆっくりとした呼吸と動作で行いましょう。
◆背中の下部と腰を伸ばす運動
背中と腰の筋肉の緊張がほぐれ、コリや重苦しさがとれるほか、背骨や骨盤のゆがみを矯正する効果もあります。
- 仰向けに寝て両膝を立てます。両腕は左右にまっすぐ伸ばして体支えます。
- 息を吐きながら両ひざをゆっくりと右側に倒します。その体勢を10秒程度維持します。
- 息を吸いながら元の位置に戻し、今度は左側に倒します。
両肩が床から離れないようにして行うとより効果的です。足を倒す時、倒す方向とは逆方向に顔を向けるようにすると体が浮きにくくなります。足が倒れにくい時は、片手を使ってひざを押しましょう。 - 5〜10回程度行います。
◆股関節まわりの筋肉を伸ばす運動
股関節は上半身と下半身をつなぐ重要な位置にあります。あらゆる動作の要になっているため、股関節の動きが悪くなると全身のバランスが崩れ、腰やひざなどの関節が痛んだり姿勢が悪くなるなどの異常が起こります。
1.太もも内側の筋肉(内転筋群)のストレッチング
太ももの内側の筋肉を伸ばす効果があります。背中を壁にぴったりと付けて背筋を伸ばして行うと、背中の筋肉の緊張も取れます。
- "あぐら"をかいて、両足の裏の合わせます。
- 手のひらで両ひざを下に押せるだけ押します。20〜30秒続けます。
体を前に倒すと負荷を強めることができます。また、小きざみな上下運動を加えると筋肉は良く伸びます。 - 5〜10回程度行います。
2.骨盤の筋肉(腸腰筋)のストレッチング
- 片足を前に大きくふみ出し、ひざを深く曲げて腰を落とします。もう片方の足は後ろに伸ばします。
- 両手はひざの上に起き、背筋を伸ばしてまっすぐ前を向きます。この状態を20〜30秒維持します。つらい時は両手を床についた状態で行って下さい。
- もう片方の足も同様に行います。5〜10セット行います。
後ろ側の足の股関節の前面がつっぱるような感じがすれば、筋肉がよく伸びている証拠です。
腸腰筋の機能が高まると、骨盤の位置が正常に保たれ、背骨の歪みが矯正されて姿勢がよくなります。
◆太ももの筋肉を伸ばす運動
太ももの筋肉が弱くなると、股関節の動きが悪くなるほか、骨盤の傾きも大きくなります。これらは腰痛を引き起こす大きな要因の一つです。また、坐骨神経痛の原因にもなります。
1.太ももの前面(大腿四頭筋)のストレッチング
- 座って両足を前に伸ばします。
- 片方の足のひざを折りたたむように曲げます(図@)。この時点で太ももの前面が伸びてつっぱるような感じがすれば筋肉がよく伸びている証拠です。
- その状態でも余裕があれば、上体をゆっくりと後ろに倒して負荷を強めます。
- 筋肉が伸びて気持ちいいところで止め、10秒程度キープします。もう片方の足も同様に行います。これを5〜10回繰り返します。
※立った状態で行うこともできます(図A)
2.太ももの裏面(ハムストリングス)のストレッチング
- 片方の足を内側に曲げ、もう片方を伸ばして座ります。
- 伸ばした方の足首に触るように上体を傾けていきます。実際に触れなくてもよいので無理のない範囲で前屈します。伸ばした足の膝が曲がらないようにするのがポイントです。
- この状態で10秒間保ちます。反対側の足も同様に行います。これを5〜10回繰り返し行います
※余裕のある人は両足を伸ばして行ってもかまいません。
3.太ももの裏面のストレッチング2
- 脚を伸ばしてあお向けに寝ます。
- 片足を曲げてひざの裏側を両手で抱え、痛みのない範囲で胸に引き寄せます
- この状態で10秒間保ちます。反対側の足も同様に行います。これを5〜10回繰り返し行います
5.仙腸関節を矯正する体操
仙腸関節は骨盤の「仙骨」と「腸骨」の間の関節です。関節といっても継ぎ目のようなもので、3〜5ミリの隙間しかあいておらず、靭帯によって強く結び付けられているためほとんど動きません。しかし仙腸関節のゆがみやねじれが慢性腰痛の原因になるという指摘があります(参考:腰痛と仙腸関節の関係)。
ここでは、自分で手軽に行える仙腸関節の矯正法を紹介します。
定期的に行うことで、仙腸関節をほぐし、ゆるめていくことができます。あくまで簡易的な矯正法ですので、本格的な治療効果を望む場合は専門科のケアが必要です。
図@「固定したテニスボール」
図A「ボールを当てる位置(仙腸関節)」
お尻の割れ目を下から上へ指でなぞっていき、
はじめに当たる硬い骨が「尾骨」です。尾骨から
斜め上45度の直線上に仙腸関節があります。
左右のお尻の真ん中(点線)よりやや内側です
準備物
- 硬式テニスボール2個、ボールを固定するためのガムテープなど
やり方
- 硬式テニスボールを横に2つピッタリとくっつけた状態で、ガムテープなどで固定します。ボールが上下左右に動かないようにしっかりと固定しましょう(図@)。
- ボールの上に仰向けに寝て、仙腸関節の位置にボールが当たるようにします(図A)。
「痛気持ちいい」ような感じがすれば仙腸関節が刺激されている証拠です。この状態で1分くらい動かずにいます。長くても3分以内にしましょう。これを朝晩一回ずつ行います。
ポイント・注意点
- 枕は使わず、フローリングや畳など、なるべく固い床の上で行ってください。
- 矯正の最中はなるべく体を動かさず、ボールの位置を変えるときは寝たままやらないこと。
- やりすぎると逆に腰を悪くする恐れがあるので、最大でも一日3回までにしてください。